医療者に求められるEBPのコアコンピテンシーは、2018年にJAMA Netw Openで発表された論文(Albarqouni L., et al. 2018)が、近年では最も体系的に整理されているものの1つですが、2021年6月にヨーロッパの看護師を対象としたEBPコアコンピテンシーの論文が発表されました(Dolezel J, et al., 2021).
Albarqouniらのコアコンピテンシーと、今回のDolezelらのコアコンピテンシーの違いの1つとして、前者はEBMの5つのステップがフレームワークとして使われていますが、後者はMelyk博士が提唱した7つのステップが使われている点があげられます.詳しくは論文のTable S4(ウエブサイトからダウンロードが必要です)になりますが、7つのステップとは、EBMの5つのステップに、"STEP 0. CULTIVATE A SPIRIT OF INQUIRY WITHIN AN EBP CULTURE AND ENVIRONMENT"、”Step 6. DISSEMINATE THE OUTCOMES OF THE EBP DECISION OR CHANGE" が加わったバージョンです.
例えば日本でも、エビデンスという言葉は聞いたことがあっても、実際にEBPに取り組もうというモチベーションにまでは至っていなかったり、このケアはうまくいっているんだろうか?もっと他にいい方法はないだろうか?といった疑問をもてる余力がない場面も多々あると思います.そういったEBPで臨床疑問を明確にする前の段階(Step0)の土台作りは、EBPのコンピテンシーを高めるうえで不可欠です.
またこのコアコンピテンシーのもう一つの特徴として、各コンピテンシーにLearning outcomesが対応しているところです.例えば、EBPに関する教育介入を行う場合ときには、全てのコンピテンシーを一度の介入で高めることは難しいかもしれませんが、どの部分を意図した教育デザインを組んでいるのか、そういった観点から点検するときにも役立ちます.
日本では、EBPのコアコンピテンシーとして明文化された論文等はありませんが、国や地域、職種によらず共通する部分と、何らかの背景(文化や制度など)によって異なる部分を評価しながら、このような既存の文献も活用することが必要です.
References.
・Albarqouni L, et al. Core Competencies in Evidence-Based Practice for Health Professionals: Consensus Statement Based on a Systematic Review and Delphi Survey. JAMA Netw Open. 2018;1(2):e180281. doi:10.1001/jamanetworkopen.2018.0281
・Dolezel J, et al. Core Evidence-Based Practice Competencies and Learning Outcomes for European Nurses: Consensus Statements. Worldviews Evid Based Nurs. 2021 Jun;18(3):226-233. doi: 10.1111/wvn.12506. Epub 2021 May 24.
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