2024.02.25 22:00事例 | 米国マウントサイナイ モーニングサイド病院のEBPを支える仕組み日本でも看護師の院内研究(看護研究)の取り組みが行われていますが、米国では、看護師の看護研究(一般化を目指した新しいエビデンスの創出)の支援だけではなく、EBP(すでに得られている研究の知見をもとに、実践を変えていく取り組み)の支援を行う取り組みが行われています(岩間, 2023a).とくにアメリカ看護師協会によるマグネットホスピタルの認証では、「新しい知識,変革を駆使し,質の向上を図る」ことがその要素の1つとされており、ニューヨークにあるマウントサイナイ モーニングサイド病院での取り組みについて、日本でも紹介されています(岩間, 2023b).EBPは、しばしば「研究を行うこと?」と誤解されることがあります。EBPのClinical Question...
2023.08.29 22:00胆嚢癌の終末期に代替医療を求めて遠方の医療施設へ転院した1事例を振り返って(2004)EBMの文脈では、しばしば「科学的根拠に基づく現代の標準治療」と「代替療法」について取り上げられることがあります.昨今もネットニュースやSNS、あるいは医師が執筆した書籍等で、このことについて触れられることがあります.橋本ら(2004)の論文「胆嚢癌の終末期に代替医療を求めて遠方の医療施設へ転院した1事例を振り返って」では、胆嚢癌の終末期に代替医療を求めて遠方の医療施設へ転院した患者の事例について、患者の死後1ヵ月の夫との面談から得られた家族の思いについて、述べられています.医療者の立場からは、おそらく単に「代替療法そのものの推奨・非推奨」という見解を示すというのではなく、患者の置かれている状況、標準治療の比較、そのうえでの治療法の選択、といったプロセ...
2023.04.14 23:00Case study|APNがfront-line NsのEBPを促す能力に影響する要因とは?(2012)Gerrishら(2012)は、高度実践看護師(APNs)が臨床で直接ケアを提供するfront-line nurses(FLNs)のEBPをどのように促すのか、そのために必要な能力にはどのような要因が影響しているのか?という調査の結果を報告しています.この論文では、イギリスの病院やプライマリケア領域の23人のAPNsを対象に行ったケース・スタディで、データ収集は、APNsへのインタビュー、APNsの活動に関わるFLNsや多職種、nurse managersへのインタビューに加えて、研究者によるAPNsの臨床場面の観察(non-participant observation)も含まれました.これらのデータはcross-case analysisで分析され...
2021.11.24 23:00連載 | 看護師のギモンに応える!エビデンスの使い方・広め方 第8回 対象者の人生と向き合うEBPのプロセス (2021.11)週刊医学界新聞の連載「看護師のギモンに応える!エビデンスの使い方・広め方 」(看護号)の第8回は『対象者の人生と向き合うEBPのプロセス』です.この回では、高齢者ケア施設での取り組みを、エビデンスを調べながらよりよい取り組みへと整えていく過程で、入居者とどのように向き合われていたのかが紹介されています.この回では「エンディングノートの配布」について取り上げられています.これはPICOの"I"(=intervention)に相当するものですが、ケアの"I"を考えるときに手術や薬物療法とは少し性質が異なるのは、「〇〇をすれば」の「〇〇」というラベリングされた介入の名称に引っ張られてしまわないよう、注意が必要な点です.あくまでも「〇〇」は行われるケアの総称で...
2021.10.25 08:00連載 | 看護師のギモンに応える!エビデンスの使い方・広め方 第7回 EBPで患者・家族の意思とエビデンスを統合する (2021.10)週刊医学界新聞の連載「看護師のギモンに応える!エビデンスの使い方・広め方 」(看護号)の第7回は『EBPで患者・家族の意思とエビデンスを統合する』です.この回では、感染症看護の事例をもとに、患者・家族の希望と病院での安全管理の観点で、エビデンスを統合しながら方針を決めていく過程が示されています.連載第6回までは、ある病棟に入院する患者といった部署などの単位で、集団を対象にエビデンスに基づく介入(evidence-based intervention)を適用することを目指した取り組み事例でしたが、第7回では、患者・家族といった個人へのケアについての事例というのが、これまでの事例とは異なる点です.また第5回に続き、COVID-19患者の事例ということで、と...
2021.09.29 10:00[連載] 看護師のギモンに応える!エビデンスの使い方・広め方 第6回 EBPのモデルを用いて組織横断で取り組む(2021.9)週刊医学界新聞の連載「看護師のギモンに応える!エビデンスの使い方・広め方 」(看護号)の第6回は『EBPのモデルを用いて組織横断で取り組む』です.この回では、様々な分野の認定・専門看護師、認定看護管理者の皆さんが集まるからこその価値をさらに高める場作りを、EBPのプロセスモデルを用いながら紹介されています.複数の認定・専門看護師が在籍されている機関では、「認定・専門会議」という活動があることを、以前いくつかの病院の方からお聞きしました.認定・専門会議はもちろん、EBPのプロセスをチームでstep by stepで共有していきたいと考えている皆様の背中も押してくれる取り組みです.
2021.08.29 23:00[連載] 看護師のギモンに応える!エビデンスの使い方・広め方 第5回 コロナ禍のICUで実践する多職種とのEBP(2021.8)週刊医学界新聞の連載「看護師のギモンに応える!エビデンスの使い方・広め方 」(看護号)の第5回は『コロナ禍のICUで実践する多職種とのEBP』です.この回では、COVID-19重症患者の腹臥位療法で、皮膚障害の発生を下げるための取り組みが紹介されています.多くの職種・スタッフが関わる医療現場では、ケアを統一したり標準化したりするためにチェックリストがしばしば作成されますが、こういった試みにリサーチエビデンスが反映されていく過程を、EBPの観点からまとめられています.EBPはリサーチエビデンスありきではなく、現状の丁寧な把握と患者・医療チームのアセスメントの先にあるよりよいケアを目指した過程の一部であることがわかる回です.
2021.07.25 23:00[連載] 看護師のギモンに応える!エビデンスの使い方・広め方 第4回 慣習を見直しEBPにつなげるリーダーシップ(2021.7)週刊医学界新聞の連載「看護師のギモンに応える!エビデンスの使い方・広め方 」(看護号)の第4回は『慣習を見直しEBPにつなげるリーダーシップ』です.この回では、管理者の視点から「実際に何から考えていけば良いのだろう?」について、事例とともに紹介されています.EBM(EBP)では5つのステップが有名ですが、Step1の「臨床疑問を定式化する」前には、そもそも疑問をもつというStep0 が必要です.それは、EBPかどうかによらず、「もっと良くできるのではないか?」という日々の実践を見直すことそのものであり、「慣習を見直す」というところにつながってきます.では、どうして慣習は見直されずに引き継がれていくのか・・・というのは、誰しもがはっとするところではないか...