[EBP教育プログラムの評価] The Johns Hopkins Nursing Evidence-Based Practice Model を用いた前後比較研究(2020)

強い効果を示すEBP教育プログラムのエビデンスはまだ不十分で、教育介入の評価が求められています.そのような中、Liuら(2020)は、the Johns Hopkins Nursing Evidence-Based Practice Model を用いた教育プログラムを開発し、その結果が発表されました.

この研究では、次のような内容が報告されました.

・対象は中国の医療センターに所属する約1400人の看護師で、このうち111人が研究に参加
・研究デザインは、教育プログラムの前後比較
・教育プログラムは、the Johns Hopkins Nursing Evidence-Based Practice Modelを用いながら、その他の教科書等も参考に設計され、複数の教育モジュール(自己学習、on-siteの講義、ワークショップ)とEBPの実装期間を経て評価

・アウトカムは、EBP-I・EBP-B、クリティカルシンキングの尺度を使用し、さらに計画したEBP projectが実施できたかを評価

・とくにEBPに対する信念、スキル、態度で、ややスコアが向上する傾向がみられた

・対象者の属性によって、各アウトカムのスコアの傾向が異なった

・計画されたEBP projectは、EBP projectが成功したもの(院内で普及されたもの、論文投稿されたもの、ケアの質改善がみられたもの)、成果が得られなかったもの、実装フェーズに移せなかったものもあった


EBP projectの評価は、病院全体の組織横断型プロジェクトや1病棟だけではなく、Liuらの研究のように、活動の範囲や対象・目的に応じて、複数のEBP projectが立ち上がり、その共通基盤として教育プログラムを提供する、という考え方で研究デザインを検討することもできます.

一方で、EBP projectの内容によってアウトカムの変化が異なることが予想される場合には、EBP教育プログラムによる影響と、参加者が取り組んだEBP projectによる影響が混在し、評価が困難になることも考えられます.論文では述べられていませんが、例えば、プロジェクトが成功したグループかどうかで、結果の傾向が違うのか?といった検討も必要かもしれません.

また本文中でも記述されていましたが、EBPをprojectとして実施し、その評価を行っているため、対象者には様々なレディネスの人が含まれていました.

EBP教育介入では、このようなcomplex interventionとなりやすいため、研究デザインと評価の方法論はますます重要になるでしょう.


Reference.

Liu M, et al. A multi-dimensional EBP educational program to improve evidence-based practice and critical thinking of hospital-based nurses: Development, implementation, and preliminary outcomes. Nurse Educ Pract. 2020;52:102964. doi: 10.1016/j.nepr.2020.102964. 


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