EBP実装ダンジョン~攻略のための7つの謎解き

EBMの5 stepsを拡張したEBPの7stepsは、看護分野において国際的には引用されることが多いように思いますが、日本でEBPの7 stepsについて紹介した記事は多くありません.書籍や記事は英語で書かれたものは多くありますが、英語はちょっとハードルが高いという方にぜひおすすめしたいのが、NurSHAREというサイトに掲載されている「カピバラ教授のアディショナルタイム 第12回:EBP実装ダンジョン~攻略のための7つの謎解き」(酒井, 2023)です.


EBM/EBPのプロセスで実際にぶち当たる壁をどう乗り越えるか?今からできるtipsがたくさん紹介されています.おそらく、EBM/EBPにある程度馴染みがある人には「そうそう!」と思わずうなずきながら、これから取り組んでいこうと思っている人にはEBPの「見通し」のイメージが沸くのではないかと思います.



PICOはたくさんつくってみることが大切です。宝くじは買わないと当たらないと言いますか、鉄砲も数打ちゃ当たると言いますか、10個くらいPICOをつくってみれば1個くらいはいい感じのものができるかもしれません。気軽に取り組むのが大切です。(Step1より)


「慣れてきたら文献を読むのが楽しくなってきました」と修士1年の前期くらいによく院生がきらりんと目を輝かせてつぶやくことをよく見聞きしますが、それってダムに水が溜まったっていうことなんじゃないかなと思います。ある程度たくさん読んでいくと、知識と知識の関係性が見えてこれがこうだからこれはこうなっているのね、と、どんどん使える知識になっていきます。そうなったら楽しくなるんです。(Step2&3より)


“やめる系”のEBP実装のキモは、現場のみなさんが「このケア・業務をやめても世界は終わらない」「このケア・業務をやめたら、患者家族の負担が減る」「わたしたちも業務が減りハッピーになる」と思えるようにすることです。(Step4より)


ところで、看護師だけでできるEBP実装ネタはほとんどありません。昨今の医療では単一職種で完了する診療ケア業務はないのですから、医師、薬剤師、理学療法士、作業療法士、栄養士などと協働しないと、ケアを改善することは難しいですよね。多職種チームでケアの改善を話し合う時の共通言語が、EBPであり、ガイドラインであり、研究論文です。そしてこの時の共通のゴールは、患者の安全、安心、安寧ということになります。(Step4より)


患者に改善したケアをやってみて、10例くらいのうち、8例くらいに良い結果が出たとします。そうしたら、やりっぱなしではいけません。ダンジョン攻略は、脱出し宿屋に帰るまでがセット。なぜ効果があったのか、効果が出なかった2事例は何が要因だったのかをまとめましょう。そして、次の改善に生かす教訓を共有しましょう。これが評価です。(Step5&6より)


そして、ダンジョン攻略が成功したことを院内発表会などで共有し、みんなで祝福しましょう。だって頑張ったんですからね。その結果、患者へのケアが良くなったわけですから、花火を打ち上げましょう。それが良いケアの普及につながります。(Step5&6より)


EBP実装にはリーダーが必要です。カピバラの私見では、リーダーとは、メンバーをまとめて(このチームから離れたくないなと思わせると言い換えても良いかもしれません)、危険を察知し、進むべき方向性を指し示す役割の人。組織の方向性と部署の困りごとと、患者の安全、安心、安寧を結び付けて、ケア改善の方向性を見失わない人がリーダーになると良いと思います。


同連載の記事「第2回:「聖なる牛」を探せ~EBP実装の旅の始まり」や著者の別の記事「組織を理解し取り組むEBP」(医学界新聞:看護師のギモンに応える!エビデンスの使い方・広め方 連載第3回)もあわせて読むことで、とくに組織的なアプローチの視点が広がるのではないかと思います.


Reference.


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検索メニュー探すシェアする2023.03.24酒井 郁子(千葉大学大学院看護学研究院附属専門職連携教育研究センター センター長・教授) カピバラの3月は、国際EBP月間でした。東京マラソンで来日していた、実装研究のきら星のようなUSAの教授と銀座でミーテイングしたのを皮切りに、EAFONSのワークショップでJapan EBP千葉の活動紹介、そして、この活動紹介で焦点を当てた大学病院のEBP研修の成果発表会と、毎週のようにEBP関連の行事が続きました。なので、EBP実装について考えることに浸った1ヵ月でござった。  時折いただく「読みましたよ」「おもしろかった」のお言葉に支えられ、この連載も、時々低空飛行、着陸は常に胴体着陸的になんとか1年間続けることができましたが、今回は、1周年記念(祝!)として、EBP実装ダンジョンの攻略のカギとなる事柄について書いてみたいと思います。 研究成果は実践と教育に実装され、初めて患者・利用者・家族・コミュニティに届くわけなので、エビデンスをつくったら、どのように「現場」に組み込むのかについてもよく考える必要がある。これが医療系の研究っていうこと。しかし医療現場、教育現場は、これが患者にとって良いことであるよと研究でいくら明らかになったとしても、サクっと変化するわけではありません。そこでEBPの実装を成功に導くために、いつ誰に何を働きかけるかということについて、やることの「順番」があります。そしていろんな研究者がいろんな立場で、EBP実装のための考慮すべき要素と順番をモデルにした「フレーム」を発表しています。共通しているのは、ケアを改善する、実践の質を上げる、社会を良くする、というEBPの目的かなと思います。ですので、自分たちが使いやすいフレームを見つけるといいのかなと思います。  ケアを改善しようと思ったら、チームをつくり、段取りを決め、装備を整えて、どこにラスボスがいそうか、あたりをつけてスタートさせましょう。RPGのダンジョン攻略と同じです。ケアの改善のスタートは通常業務ではなくプロジェクトです。このプロジェクトで良い結果が得られるようなら通常業務に組み込んでいき、定着を目指すのです。 これから説明するのは、Menlyk博士(Melnyk BM)が提唱する7つのステップに基づいています(7つのステップについてのさらに詳しい解説は、

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