EBMと 5 stepsを軸に、臨床での疑問と研究成果のエビデンスをつなげて実践に落とし込んでいくための基礎となる考え方を身に着けることができる本です.とくに文献の批判的吟味のところでは、事例とそれに対応する研究デザインを通して、research evidenceをpracticeと統合する思考の「基本のキ」となる部分をインプットできるような構成になっているように思います.
「看護学テキスト」とあるように、とくに看護師として働く前の看護学生の皆さんはもちろんですが、看護学生だけではなく、「研究と臨床をつなぐ思考の基本となる考え方をまずは知りたい、そういった考え方に触れてみたい」という人であれば、どんな人でも(臨床の人も、院生の人も、教員の人も、研究者の人も)読みやすい1冊です.既存の書籍でよくある医学のEvidence-based Medicine、ヘルスケア領域全般のImplementation Science、看護のようにチームで動くことを基本としている専門職の組織的なEBPの展開に関する本に手を伸ばしてみたときに、ちょっとハードルを感じる…そんなときにも、EBPの入り口の本として読み返すのもよさそうです.
これまでにも、看護分野に関する「根拠に基づいった実践」に関する書籍は何冊か出版されていますが、英語圏に比べると、とにかく書籍が少ないのが現状です.また、日本でも看護研究や看護情報学といった分野のテキストで言及されているものの、数ページの掲載で、EBPの概要の概要ほどの情報量しか記載がなく、看護の研究をすることなのか、情報を探して活用しようということなのか、あるいは、EBPなのか、少し混乱することもあるように感じます.看護学は実践の科学の側面を持ち合わせているので、マクロな視点でみれば研究と実践が行き来する、循環するのはその通りなのですが、実践にフォーカスを当てたサイクルも、もっともっと広まりますように!
Reference.
西垣昌和.看護学テキスト NiCE.看護と研究 根拠に基づいた実践.2023.南江堂
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