日本でも看護師の院内研究(看護研究)の取り組みが行われていますが、米国では、看護師の看護研究(一般化を目指した新しいエビデンスの創出)の支援だけではなく、EBP(すでに得られている研究の知見をもとに、実践を変えていく取り組み)の支援を行う取り組みが行われています(岩間, 2023a).
とくにアメリカ看護師協会によるマグネットホスピタルの認証では、「新しい知識,変革を駆使し,質の向上を図る」ことがその要素の1つとされており、ニューヨークにあるマウントサイナイ モーニングサイド病院での取り組みについて、日本でも紹介されています(岩間, 2023b).
EBPは、しばしば「研究を行うこと?」と誤解されることがあります。EBPのClinical Questionと研究のReseach questionは、明らかにしたいことの目的が明確に異なりますが(Melnyk et al., 2023)、一方で、研究する文化が組織の中にあるということは、実践に関する疑問を明らかにしようとする活動につながります(アイオワ大学病院看護研究・EBP・質改善部門(編)/松岡ら(監訳), 2018).
日本で、臨床看護師が看護研究に取り組むことでどのような経験をしているのかについては、すでに様々な報告がありますが(宇多, 2012)、看護研究の経験がある人ほど、EBPに対する自己評価が高いといった報告もあります(Tomotaki et al., 2020).日本の院内看護研究の慣習を、EBPの取り組みへスイッチしていくことも、限りある時間を日々のケアの質改善・工場のために使っていくための重要な方略の1つです.
Reference.
- 岩間 恵子.連載 これからの臨床現場を支えるために COVID-19を経験した米国の看護現場から・18 マグネット認証(Magnet Recognition®)を通して看護の質と患者アウトカム向上を考える—新しい知識創造のための看護研究.看護管理.2023a;33(6):536-539.https://doi.org/10.11477/mf.1686202415
- 岩間 恵子.連載 これからの臨床現場を支えるために COVID-19を経験した米国の看護現場から・19 臨床看護師同士で看護研究とEBPをサポートする—新しい知識創造のための看護研究・2.看護管理.2023b;33(7):634-637.https://doi.org/10.11477/mf.1686202440
- Melnyk BM, et al. Evidence-Based Practice in Nursing & Healthcare: A Guide to Best Practice. (5th edition) . 2023.
- アイオワ大学病院看護研究, EBP, 質改善部門(著)/松岡千代ら(訳)(2018). 看護実践の質を改善するためのEBPガイドブック:アウトカムを向上させ現場を変えていくために.ミネルヴァ書房. 2018. https://www.minervashobo.co.jp/book/b356700.html
Tomotaki A, Fukahori H, Sakai I. Exploring sociodemographic factors related to practice, attitude, knowledge, and skills concerning evidence-based practice in clinical nursing. Japan journal of nursing science. 2020;17(1): e12260.
https://doi.org/10.1111/jjns.12260 [PMID: 31173465]宇多 絵里香.【臨床看護師が取り組む研究モデルの探究】臨床看護研究に関する文献検討.看護研究.2012;45(7):630-637.https://doi.org/10.11477/mf.1681100716
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