エビデンスのあるケアや治療等の普及に関しては、臨床ガイドラインと実践のギャップ(Evidence-practice gap)の研究が進んでいます.Correa VCらは2020年に "Individual, health system, and contextual barriers and facilitators for the implementation of clinical practice guidelines: a systematic metareview" という論文を発表しました.
EBPを促進・阻害する要因は個人・組織・社会と様々なレベルに存在しますが、この論文は、臨床ガイドラインの実装の観点から、すでに行われている25のシステマティックレビューのmetareviewの結果を報告したもので、次のことが明らかとなりました.
#阻害要因
・社会・政治的な文脈:リーダーの不足、チームワークの困難さ、同僚の同意が得られない
・ヘルスシステム:時間の不足、財政的な問題、専門家の不足・臨床ガイドライン:エビデンスの明確さや、エビデンスに対する信頼性の欠如
・臨床家:臨床ガイドラインに関する知識不足、自分自身の自信・患者:実装(implementation)に対するネガティブな態度、臨床ガイドラインに関する知識不足、社会・文化的な信念によるもの
#促進要因
・最も多かった促進要因には、次の要因が含まれていた:
一貫したリーダーシップ、チームメンバーのコミット、組織の管理者のサポート、多職種チーム、臨床ガイドラインに関する実践や教育を改善するための技術の適用
近年のシステマティックレビューが増加し、エビデンスの確からしさや質の高いエビデンスが臨床ガイドラインに反映されやすくなっている一方で、それらを実践の場で適用していくうえでは、組織が一体となって取り組むことの必要性が、あらためて明らかになったといえるでしょう.
臨床ガイドラインで示されるような標準的なケアや治療が、選択肢の1つとして患者へ適切に提示される環境を整えることが、組織としても求められています.
Reference.
Correa VC, et al. Individual, health system, and contextual barriers and facilitators for the implementation of clinical practice guidelines: a systematic metareview. Health Res Policy Syst. 2020;18(1):74. doi: 10.1186/s12961-020-00588-8. PMID: 32600417; PMCID: PMC7322919.
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