Evidence-practice gapを評価するためには、推奨される治療やケアと実際に行われている方法の乖離を調査する必要があります.このような研究の例として、2003年に発表された "The Quality of Health Care Delivered to Adults in the United States" という論文があります.
この研究はアメリカの12の都市に住む成人を対象に行われたものです.ランダムに選ばれた人に電話をかけ医療機関の受診を尋ね、直近2年間のカルテ閲覧の許可を得てデータ収集が行われました.30の急性期・慢性期分野で、ケアの質や予防ケアに関する439の指標を評価され、次のようなことが明らかとなりました.
・推奨されるケアを受けていたのは、全体で54.9% (95%信頼区間:54.3 - 55.5)
・急性期と慢性期では、推奨されるケアの割合にほとんど差はなかった(急性期ケア 53.5% vs 慢性疾患のケア 56.1%)
・医療機能別でみたケアプロセスの遵守率は、スクリーニング52.2%~フォローアップケア58.5%の範囲だった・ただし特定の病状別でみると、推奨されるケアの割合は、アルコール依存症に対する推奨ケアで10.5%(95%信頼区間:6.8~14.6)から老人性白内障の推奨ケアで78.7%(95%信頼区間 73.3~84.2)とばらつきがみられた
この研究が行われたのは1998年10月から2000年8月ですが、現在このような研究は、レセプトや疾患レジストリのデータを使った研究などに発展しています.検査・治療・ケアの内容や疾患等による違いをふまえて、推奨される方法が臨床でどのくらい行われているか実態を明らかにしていくことは、医療の格差を埋めていくえうでも重要な知見となるでしょう.
Reference.
McGlynn EA, et al. The quality of health care delivered to adults in the United States. N Engl J Med. 2003;348(26):2635-45. doi: 10.1056/NEJMsa022615. PMID: 12826639.
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