2024.02.09 08:00研究成果を実践に活かす:日本の看護分野の歴史をたどる(1989-2016)「研究成果を実践に活かす」という考え方は、今はEvidence-based Medicineの流れを汲んで、Implementation Sciece、Shared Decision Makingとつながっています. EBMが登場する以前は、とくに看護分野ではresearch utilization(研究成果の活用)の考え方で論じられてきていたように思います.そこで、現在に至るまでにどのような研究がなされていたのか、直近5年間を除いた2016年までの文献で辿ってみたいと思います.※なお、この記事に掲載している文献は、網羅的ではなく、当サイト管理人の主観に基づいて取捨選択したものです.History 1989-20161989年雑誌「看護研究」...
2023.12.03 00:00研究成果の活用 | 日本の看護師を対象とした調査の例EBMの概念が提唱された1990年代より以前は,看護分野では「Research Utilization」という,研究成果を臨床で取り入れていくという概念が用いられていました.これは,日本でも「研究成果の活用」という言葉で知られています.参考:医学中央雑誌を用いて,文献のタイトルに「研究成果 and (活用 or 利活用)」が含まれる文献は172件で,このうち原著論文は29件でした.(2023/12/2時点)この投稿では,研究成果の活用に関する研究の書誌情報を掲載します.なお,文献のいくつかについては,研究で明らかになった知見の一部を引用紹介します.2023年奥村智志, 小久保 知由起.精神科看護師の研究成果活用に対する意識に影響する要因.看護科学研究....
2023.11.26 00:00Organizational Culture and Readiness for System-wide Integration of EBP scaleを使った研究論文の例EBPに対する組織の準備性(readiness)を評価する尺度のひとつに、Melnykらが発表した Organizational Culture and Readiness for System-wide Integration of Evidence-based Practice (OCRSIEP) scale があります.(*書籍は2006年、論文は2010, 2022年、短縮版の発表は2021年)この記事では、OCRSIEP scale を用いた研究結果を報告した論文を紹介します.Exploring nurse beliefs and perceived readiness for system wide integration of ...
2023.04.15 09:00Multiple case study | Front-line nursesのEBPにAPNsが影響を及ぼすプロセスとは?(2013)McDonnellら(2013)は、2005年にイギリスの高度実践看護師(APNs)のインタビュー等を行ったmulti case studiesから、Front-line nursesのEBPにAPNsが影響を及すのか、そのプロセスについて報告しました.この調査は、purposive sampling strategyに沿って、様々な背景をもつ23人のAPNsが対象となり、データは、APNsへのインタビュー、APNsの活動に関わるFLNsや多職種、nurse managersへのインタビュー、研究者によるAPNsの臨床場面の観察(non-participant observation)によって収集されています.(なおこの論文は、Gerrishらが201...
2023.04.14 23:00APNsへの調査 | Front-line nursesのEBPに対して、高度実践看護師は何に寄与しているのか?(2011)Gerrishら(2011)は、臨床で直接ケアを行う看護師(Front-line nurses, FLNs)のEBPを促すために、高度実践看護師(APNs)が何に貢献しているのか?を明らかにするために行った大規模なcross-sectional studyの結果を報告しています.調査の概要・調査:2005年・対象:イギリスの87病院のAPN3014人にアンケートがわたり、855人の回答が得られた(APNへの依頼の方法が病院によって異なるため、完全な分母は把握できなかったとのこと)・結果- 対象者の背景:修士・博士取得者は全体の約30%、学部卒は約36%- 臨床で根拠として実際に用いている情報源 (The evidence that I use in m...
2023.04.14 23:00Case study|APNがfront-line NsのEBPを促す能力に影響する要因とは?(2012)Gerrishら(2012)は、高度実践看護師(APNs)が臨床で直接ケアを提供するfront-line nurses(FLNs)のEBPをどのように促すのか、そのために必要な能力にはどのような要因が影響しているのか?という調査の結果を報告しています.この論文では、イギリスの病院やプライマリケア領域の23人のAPNsを対象に行ったケース・スタディで、データ収集は、APNsへのインタビュー、APNsの活動に関わるFLNsや多職種、nurse managersへのインタビューに加えて、研究者によるAPNsの臨床場面の観察(non-participant observation)も含まれました.これらのデータはcross-case analysisで分析され...
2023.02.04 09:00The Evidence-based practice Belief Scaleを用いた研究論文の例EBPの自己評価尺度のひとつに、Melnykら(2008)が開発したthe Evidence-based practice beliefs(EBP-B) scaleがあります.本サイトでも、この尺度の翻訳状況や短縮版の尺度に関する論文を紹介してきました.この記事では、EBP-B scaleを用いた研究結果を報告した論文の例を掲載します.Beliefs and implementation of evidence-based practice among nurses in the nursing homes of a Swiss canton: An observational cross-sectional study. Perruchou...
2023.01.30 08:40学会発表 | East Asia Forum of Nursing Scholars 20232023年3月10-11日に行われる26th East Asia Forum of Nursing Scholars (EAFONS2023) にて、EBPに関する研究を演題登録しています.Tomotaki A, Kodama Y, Futami A. Methodology for searching and screening the studies on evidence-based practice in Japanese nurses: A pilot test for scoping reviewTomotaki A, Sakai I, Fukahori H, Tsuda Y. Process of integratin...
2023.01.26 10:30高度実践看護師のEBPにおける文献の批判的吟味とその学習に関連する要因(2023.01)EBPの5つのステップの中でも、しばしば、最も行われている頻度が低いという自己評価されているのがstep3の文献の批判的吟味です.文献の批判的吟味に求められる研究の知識・スキルは、EBPの阻害要因の1つとして知られています.そのような中、EBPをリードする役割が期待されている専門看護師の皆さまを対象としたインタビューで、EBPにおける文献の批判的吟味とその学習に関連する要因についてまとめた結果が、公開されました (Tomotaki et al, 2023).この研究では、EBPにおける文献の批判的吟味とその学習に関連する要因として、次の4つが抽出されました.・Individual beliefs and attitude・Learning status...
2022.12.29 09:00Scoping Review | Factors related to the knowledge and skills of evidence-based practice among nursesWorldviews on evidence-based nursingのearly viewにて、EBPの知識やスキルに関連する要因のscoping reviewが公開されました (2022 Dec 26).Furukiらは、2021年10月までに発表された英語で発表された量的研究の論文47本について、どのような要因がEBPの知識・スキルに関連するのかをレビューした結果、個人要因と組織要因の2つに大別され、次の要因が関連している可能性があることを報告しています.・Educational level・Participation in EBP education・Experience conducting research・Resources and o...
2022.12.29 09:00作業療法学分野|EBPのコンピテンシー、信念対立からみるEBP日本のEBP研究で、今年(2022年)に作業療法学分野から発表された論文2本をご紹介します.■ 廣瀬ら(2022). 回復期の脳卒中上肢機能訓練における信念対立の質的解明.廣瀬ら(2022)の論文で、作業療法士6人を対象とした半構造化面接から「信念対立の構造のモデル図」が示されています.▾図1 「信念対立の構造モデル図」より成功や失敗体験などの実体験により,治療方針に関わる信念が生成されていた.一方で,EBP における障壁を契機として,障壁により生じる信念が生成されていた.また,OTごとに EBP に対する認識論が存在した.これらの信念の存在により,治療方針の考え方の違いや,他者との関係性による信念対立が生じることが明らかとなった.また,E...
2022.11.29 07:30EBP competencies | RNs/APNsに求められるEBPのコンピテンシー看護師のEBPに求められるコンピテンシーに関する議論は様々ですが、registerd nurses (RNs) と advanced practice nurses (APNs) の違いについて整理することは、EBPの学びと実践をステップアップするうえで重要です.Melnykら(2014)は、デルファイ法を用いて、RNsに対する 13のEBP competenciesと、さらにAPNsでは11のコンピテンシーを追加する2階層でのコンピテンシーを報告しました.詳しくは論文、または、Melnykらの書籍(2018)になりますが、RNsは、EBPの取り組みに参加できること、APNsはEBPの取り組みを自ら行うことができる、という段階が示されました.「EBPの...