これまでにもEBPに関する教育・学習効果を評価する研究のSystematic Review (SR) が発表されていますが、Bala MMらは、2014年にYoung Tらが発表した学部・大学院教育に関するSR (Young T, et al. 2014)を更新するSRを2021年7月に発表しました (Bala MM, et al. 2021).
このSRでは次のようなことが明らかになりました.
・今回のSRの対象となったSRは22本(このうち16本が、前回のYoungらのSRでも対象となったSR)
・SRに含まれた一次論文は141本(このうち83本が、前回のYoungらのSRでも含まれた論文)・当初はEvidence-based Healthcare (EBHC)の教育・学習効果のmeta-analysisを計画していたが、研究の異質性の高さ等から、定量的な結果の統合は行わず、定性的に記述する方法に変更
--方法論の質評価では、質のばらつきが大きかった
・EBHC教育・学習は多面的で、臨床的に統合された介入方法が用いられるようになっていた
・全般的に、介入によって知識は改善傾向にあるが、集団別でみると、学部生ではスキルは改善傾向にあるが、大学院生では一貫した傾向がみられない、あるいは、採用されていた学習方略別にみても、全体的に一貫した傾向がみれれにくい
・患者アウトカムやケアプロセスへの影響に関するエビデンスを示すものはなし
全体的に、これまで報告されてきたSRの結果から大きな変化はなかったようですが、今回の論文でも述べられているように、異質性の高さによるmeta-analysisの難しさはこの分野の課題の1つでしょう.研究報告の質、Risk of Biasの評価は、介入研究の結果を統合するうえでは欠かせません.
また、今回のSRでも従来のSRでも、例えば「e-Learningあり vs なし」「Journal clubあり vs なし」といった学習方法によるラベリングに基づいた結果のまとめ方が試みられています.しかし、今回の論文でも述べられているように、EBP教育介入には多面的な要素が含まれています.そのような中で、あくまでも活動の名称として名づけられているラベリングで分類することには、限界があります.期待される効果を得るために構成される教育・学習の要素(あるいは、どのような学習理論に基づいて構成された介入なのか)についても、さらに情報が必要ではないでしょうか.EBP教育介入の方法論が今後さらに洗練されていくことが望まれます.
なお、今回の研究ではmeta-analysisはできなかったということですが、SRで採用されたについては、詳しい情報が表で要約して提供されています.EBP教育・学習に関する研究にご関心のある方は、ぜひご一読されることをおススメします!
References.
・Young T, et al. What are the effects of teaching evidence-based health care (EBHC)? Overview of systematic reviews. PLoS One. 2014 Jan 28;9(1):e86706. doi: 10.1371/journal.pone.0086706.
・Bala MM, et al. What are the effects of teaching Evidence-Based Health Care (EBHC) at different levels of health professions education? An updated overview of systematic reviews. PLoS One. 2021 Jul 22;16(7):e0254191. doi: 10.1371/journal.pone.0254191.
0コメント