EBPの本棚を紹介します.
◆ EBPとナラティブについて考えたいときにおススメの書籍
臨床疫学を基盤とするEvidence-basedの考え方は、ときに”ナラティブ” と対立することがあると言われてきました.EBMはしばしば「料理本のような治療やケアのことである」「個別性を無視している」と誤解されることがありますが、もしかしたら、”ナラティブとは何か?” ”Narrative medicineとは何か?”についても、人によって解釈が様々なのかもしれません.
両者にそれぞれに誤解があり、またとくにEBMは”エビデンス”が強調されてしまい、エビデンスと患者の価値観を”統合する”という、この統合の部分があまり論じられにくいところから、"ナラティブ"との不必要な対立が生じてしまっているように思います.
では、どう考えればいいのか?その思考のヒントをくれるのが次の2冊です.
- James P Meza, Daniel S, Passeman (著) /岩田健太郎(訳). ナラティブとエビデンスの間 -括弧付きの、立ち現れる、条件次第の、文脈依存的な医療. メディカルサイエンスインターナショナル. 2013
斎藤清二. 医療におけるナラティブとエビデンス 改訂版──対立から調和へ. 遠見書房. 2016
EBPは”医療者がどうするか”という視点でエビデンスの統合の仕方に重きを置いたアプローチであるといえますが、"practice"を考えるうえで、患者・家族(あるいは社会)と医療者が協同しながら意思決定を重ねていく必要があります.
例えば、臨床試験で評価される治療の「効果がある・ない」は、医療者にとっては治療を「選択する・しない」という治療選択の二分法で整理できるのかもしれません.しかし患者さんや家族にとっては、ときに自分の人生にとっての大事な決定であり、その決定をする前も、した後も、それを受け入れたり・受け入れられなかったり・その間を行き来しながら過ごしていく― その文脈は臨床試験の効果や有害事象として定量的に集団の結果として示される結果だけでは、解釈することができないのです.
このような、『患者さんにとっての「意味」や「体験」をEBPのプロセスの中でどのように考えればよいのか?』について、EBM 対 Narrativeではなく、EBMとNarrativeの両方の側面を統合しながら考えたいという人に、ぜひおススメの本です.
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