強いevidenceのある治療やケアがあっても、それが実際の臨床で実装(implementation)されないという課題が、長く指摘されています.このようなEBPの実装(implementing EBP)を進めるためのアプローチとして、EBPのメンターの育成が注目されてきました.これは、EBPの実装には組織文化が欠かせない等が背景にあります.
EBP実装モデルにはいくつかありますが、そのうちの1つはMelnykらが開発した Advanced Research and Clinical practice through close collaboration(ARCC) Modelです.これは、mentor-menteeの関係性に注目し、mentorshipをkeyとしたモデルとして最初に概念化されたのちに、system-wide implementationとヘルスケア組織のEBPの持続性をガイドするものとして開発されました(Melnyk et al. 2018, p.514).
Wallenら(2010)は、このARCC Modelを基盤としたEBP mentorship programの評価を行った研究を発表しました.
・この研究では、2日間のEBP mentorship programが実施されました
・EBP mentorは、主に高度実践看護師が対象となっています
・参加した人・参加しなかった人、それぞれから次のようなデータがpre-postで収集されました*
- EBP関連尺度:The OCRSIEP (Organizational Culture and Readiness for System-Wide Implementation of EB), EBPB (EBP Beliefs Scale), EBPI (EBP Implementation Scale)
・データ収集では、フォーカス・グループ・インタビューも併用されました
・この結果、Organizational Culture and Readiness for EBPに対して、Nurse Retention Index, Group cohesion, Intent to leave, Job satisfactionはあまり相関は高くなかったが(-0.24~ 0.36)、EBP beliefsとはやや高めの相関がみられた(0.56).(Table 2)
・各尺度のスコアの変化について、EBP mentorship programと比較群で、それぞれ前後比較が行われ、Post scoresのeffect sizeは0.13~0.74とかなりばらつきがみらた
- 職務満足度や離職に関する尺度:Group Cohesion Scale, Job satisfaction, Intention to Leave Scale, NRI (Nurses’ Retention Index)
この研究は、プログラムへの参加の有無による違いを評価する研究方法としては、研究デザイン・分析方法にやや限界があり、effect sizes(smallからmedium)の解釈には注意が必要ですが、ARCC Modelを用いた研究の例として参考になるでしょう.
備考
*プログラムに参加する・しないについては、限界として考察で次のように述べられていますEBP Mentorship Programme group was a non-random sample that was restricted to nursing leadership and shared governance staff leaders.
Reference.
Wallen, GR., et al. Implementing evidence-based practice: effectiveness of a structured multifaceted mentorship programme. J Adv Nurs. 2010 Dec; 66(12): 2761–2771. doi: 10.1111/j.1365-2648.2010.05442.x
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