Melnykらは2018年に、アメリカの看護師約2300人から回答を得たEBPのコンピテンシーに対する調査結果を発表しました(Melnyk et al., 2018).これまでの先行研究では、看護師はEBPに対して肯定的であるものの、EBPの知識スキルが不足していると感じている傾向があり、EBP教育の先駆的な取り組みが行われているアメリカ以外の報告が多くありました.そのような中で、近年のアメリカの報告は、EBP教育がまだ遅れている国にも重要な知見です.
この調査結果では、次のようなことが報告されました.
・アメリカの19の病院等に所属する看護師2,344人から、オンラインアンケートの回答を得た
・調査票には、demographic questions/ six instruments that measured EBP knowledge/ EBP beliefs/ EBP Implementation/ perceived organizational culture and readiness for EBP/ mentorship in EBP/ the EBP competenciesといった内容が含まれた
・EBPのコンピテンシーの自己評価の平均スコアは、全体的に低いが、学歴が高くなるほどスコアの平均が高い傾向・マグネットホスピタルの病院で働いているかどうかで、EBPコンピテンシーの評価に違いはみられなかった
・EBPのコンピテンシーとEBPの組織文化の関連はやや弱い(2変数の相関係数、重回帰分析より)
・EBPの知識スキル・信念・メンターシップのスコアが高いほど、EBPコンピテンシーも高くなる傾向がみられた
EBPに対する自己評価が低いことはこれまでの研究と類似していますが、看護師を対象とした2000人以上の比較的大きなサンプル数の調査は少なく、アメリカにおいてもEBPコンピテンシーの向上は引き続き重要な課題であることがわかります.
また、個人要因だけではなく、EBPの組織文化やメンターシップも含めた分析結果は、測定(定量化)が難しい変数ではありますが、EBPの普及を考える過程では、組織分析とともに、どの要因をより強化するとよいのかを検討するうえでも非常に重要です.
日本ではまだこのような研究がほとんど行われていませんが、日本と海外の文化や医療制度の違いを考慮するうえでも、議論の土台となる基礎データが求められます.
Reference.
Melnyk BM, et al. The First U.S. Study on Nurses' Evidence-Based Practice Competencies Indicates Major Deficits That Threaten Healthcare Quality, Safety, and Patient Outcomes. Worldviews Evid Based Nurs. 2018;15(1):16-25. doi: 10.1111/wvn.12269.
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