EBP関連尺度 | Japanese Health Sciences Evidence-based Practice Questionnaire

当サイトでは、2019年までに発表された看護師対象としたEBPの調査・研究で利用可能な日本語尺度」を紹介してきました(※).そこで、2020年以降に発表された尺度として、Takahashiら(2021) の”Japanese Health Science Evidence Based Questionnaire (Japanese HS-EBP)”を紹介します.(※) 詳しくは本ページ最後の「サイト内記事」をご参照ください


Japanese HS-EBPは、スペイン語のHealth Sciences Evidence-based Practice Questionnaireを日本語訳に翻訳したもので、次の5つのドメインで構成されます.各項目は10段階評価で、調査票の詳細はSupplementary material で確認できます.

・信念・態度に関して(12項目)
・結果の評価について(12項目)
・科学的研究による結果に関して(14項目)
・専門臨床実践の発展に関して(10項目)
・障害-推進に関して(12項目)


この研究では、cross-cultural adaptation と test–retest reliabilityが検証され、対象者は臨地実習の経験がある医療系学生(看護、作業療法、理学療法)で、cross-cultural adaptationの評価では30人、test–retest reliabilityでは53人が研究に参加しています.

Table2では、項目ごとの平均・標準偏差が掲載されており、「信念・態度に関して」は全体的にスコアが高いこと、平均値は全項目5.0以上ですが、項目によって回答の傾向が異なること、また、test-retestの結果は項目によって一致の度合いにばらつきが大きいことなどが示されました.

因子分析などを用いた項目間・ドメイン間のスコアの関連については検証されていませんが、この論文の考察では、短縮版の開発の可能性について言及されています.


なお、対象者の募集は1大学のみで行われているようなので、質問項目によってはその大学の特性が反映されているのか、個人による回答のばらつきなのか解釈が難しいところがありますが、日本で医療系学生を対象としたEBP研究は非常に少なく、貴重な研究結果です.小サンプルの調査ではありますが、専門分野(看護・作業療法・理学療法)によって回答に傾向の違いがあったのかも興味深いです.



調査票詳細(Supplementary material より転載)

※この論文は、the Creative Commons Attribution Non-Commercial No Derivatives (CC BY-NC-ND) 4.0 Licenseとなっています. 
https://creativecommons.org/licenses/by-nc-nd/4.0/deed.ja


■信念・態度に関して

1. 研究結果を利用することは、私(達)の専門実践を発展させるために重要である。
2. EBPは私の臨床実践に大きな影響を与える。
3. EBPは私の専門領域の臨床実践において肯定的な役割を果たすはずである。

4. EBPは介入の質と介入の効果を高めると思う。

5. 専門的な臨床実践において、EBPは意思決定の助けとなるツールである。

6. EBPによって、より効率的に結果を得る。

7. EBPは、介入方法と治療効果に関して治療者間のばらつきを減少させることに役立つ。

8. 私の日々の臨床実践において、研究で得られた結果は重要なものである。

9. EBPの適用は、私の専門職における優先事項の一つである。

10.EBPを適用してみたいと思う。

11.EBPを適用する上で必要な能力を高めることに興味がある。

12.私が臨床で今まで当たり前に実践してきたことが不適切である。


■科学的研究による結果に関して

1. 臨床実践の中で生じた疑問や問いに対しては、最新の研究結果を検索して解決している。
2. 疑問はデータベースで検索可能なフォーマット(例 介入研究では対象者・介入方法・比較対象・アウトカム)に変換している。
3. 私の専門的臨床実践の中で生じる疑問を解決するために、研究で得られる情報を利用している。

4. 私の専門職分野の科学情報における主たる情報源を利用している。

5. 複数の電子データベースを使って論文を効果的に検索することができる。

6. 日常の臨床実践に直接関連する事柄について、最新の知見をアップデートしている。

7. 私の疑問を解決するにはどのような研究デザインによる知見が適切かわかっている。

8. 論文の質を評価するために、標準化された方法を常に用いている。

9. 私が論文を読むときは、普段からその研究方法の質を評価している。

10. 私が論文を読むときは、不適切な変数や研究の限界がある可能性を認識している。

11. 統計結果から実用的意味を解釈することができる。

12. 現在の研究結果が将来の介入方法に及ぼす関連性を評価している。

13. 私は専門家としての日常的な意思決定に最新の研究知見を使用している。

14. 私は論文を活用して EBP に沿った介入をしている。


■専門臨床実践の発展に関して

1. 専門的な臨床実践における問題を解決するため、最新の研究結果を取り入れている。
2. 研究によって得られた結果が私の普段の臨床実践と一致しない場合は、研究結果を取り入れて臨床実践を変えている。
3. 研究による知見が全くない場合は、良い結果が得られると考えられる介入を繰り返し選択している。

4. 日々の臨床実践において、他の専門職と意見交換をしている。

5. 臨床上の問いに対して論文では解決できない場合には、その分野の権威に意見を求める。

6. 患者や家族の差し迫ったニーズや心配事は、介入方法を決める際の重要な要素である。

7. 異なる複数の介入方法の情報を患者に提供して、患者が介入方法を選べるようにしている。

8. 介入方法を評価するために、どのような変化があったかについての患者からの情報も考慮に入れている。

9. 患者の好み、価値観、そして期待を取り入れて介入プランを立てている。

10. 私の専門職としての行動は、患者の好み、価値観、そして期待に沿っている。


■結果の評価について

1. 私が専門とする実践分野で最も頻繁に使われる客観的評価尺度を知っている。
2. 介入の効果を評価するために、信頼性と妥当性の確立した方法を用いている。
3. 私が使っている効果判定の尺度は研究によって裏付けられたものである。

4. 結果の分析を行うための機器/ツールに対して批判的に評価している。

5. 患者情報の収集と保管は標準化された手順で行っている。

6. 患者に評価機器や技術を適用して得られた結果を体系的に記録している。

7. 評価中や介入中における患者の全ての情報を漏れなく体系的に記録している。

8. 患者から集めた介入に関する情報を体系的に、且つ、継続的に分析している。

9. 私の実践結果は、きちんと記録を取り、その記録された結果に基づいて評価している。

10. 自分が判断して行った結果を効率の観点から評価する。

11. 自分の臨床実践を評価した後、想定外だった結果について考える。

12. 結果が想定と異なる場合、自分が行ったすべてのプロセスを見直して、想定との違いを正当化し得る説明を分析する。


■障害-推進に関して

1. 私の職場で、科学的エビデンスの情報源にアクセスできる。
2. 職場には、EBP に沿った介入方法を提示する文献がある。
3. 研究結果を用いて最新の知見を持つことが私の職場の優先事項の一つである。

4. 職場には同僚と科学的研究結果を共有し議論するためのスペースがある。

5. 私が一緒に仕事をしている同じ専門職の同僚の大半は、臨床実践に研究結果を取り入れることに対して前向きである。

6. 私が一緒に仕事している他職種の同僚は、臨床実践に研究結果を取り入れることを推奨している。

7. 私が担当する患者は、エビデンスに基づく治療を求めている。

8. 私の上司は EBP を推奨している。または、独立開業している場合は、私自身が EBP を推奨している。

9. 私の職場では、EBP の活用が十分に推進されて求められている。

10. 勤務時間中にエビデンスの検索をしたり、使ったりすることができる。

11. 私の職場では EBP の適用が推奨され称賛される。

12. 私の職場では既に確立した臨床実践パターンを変えることは簡単だ。


Reference.

Takasaki H, et al. Cross-cultural Adaptation of the Health Sciences Evidence-based Practice Questionnaire into Japanese and Its Test-Retest Reliability in Undergraduate Students. Prog Rehabil Med. 2021;6:20210034. doi:10.2490/prm.20210034


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