「聖なる牛」を探せ~EBP実装の旅の始まり

EBMのプロセスは、よくStep1「臨床疑問の定式化」から紹介されますが、このEBMの5 stepsをベースに step 0 "Cultivating of a spirit of inquiry", step 6 "Disseminate EBP results" を加えた7 stepsが、看護分野ではしばしば引用されます.このStep0から Step1へと移っていくうえでは、「慣習に気付く」ことがしばしば必要になります.


では、EBPの文脈で「慣習を変える」とは、具体的にはどのようなことなのか?これについて、「「聖なる牛」を探せ~EBP実装の旅の始まり」(酒井, 2022)では、次のように紹介されています.


「医療現場では伝統的な慣習が定着しやすく、この慣習を変化させようとすると抵抗が生まれる、というようなことは多くあります。この慣習に基づいたケアを聖なる牛と呼ぶのです」


聖なる牛に出会ったら、それはあなたに「聖なる牛をみることができる能力が備わっている」ということです。沈黙せずに、スピークアウトしましょう。EBPという旅の仲間がきっと近くにいるかもしれません。いないかもしれないけど。だけどそんなときも「親切にしたほうがいいよ、あなたが会う人はみんな厳しい戦いをしているんだから」とプラトンは言いました。みんなよい医療をしたいなと思っているのですから、そこの共有から始めるのがいいのかなと思います。


EBMのStep1の臨床疑問は、そもそも「これってどうなんだろう?」「今のままでいいのかな?」「何かちょっとひっかかる」…そんな自分の中の”ひっかかり”がないと、なかなかたどり着けないのではないかと思います.その”ひっかかり”は、私たちの身近な「慣習」に潜んでいるのだとしたら…まずは聖なる牛を探してみる!から始めてみるとよいかもしれません.


Reference.


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検索メニュー探すシェアする2022.05.19酒井 郁子(千葉大学大学院看護学研究院附属専門職連携教育研究センター センター長・教授) こんにちは、カピバラです。今回は「聖なる牛」がテーマです。“聖なる牛って、何のこと?”と思われたでしょうか。医療現場でも、教育現場でも、あなたのすぐそばに牛は隠れているかもしれません。 わたしは、1980年代の後半に看護師になりました。新卒で配属された病棟、そして病院には、「なんでそういうふうにやるのかな」と思うようなことがたくさんありました。  たとえば、すでに伝説の遺物となった包交車があって、今は無き万能つぼに、これまた今は無きイソジンに浸された綿球が入っていて、先輩ナースたちは魔法使いの杖のように、鑷子をひゅんひゅんヒラヒラと使いこなしてました。回診の最中にイソジン綿球がなくなり、「イソジン切れてるわ。カピバラ1本持ってきて」と言われ、未開封のイソジンのボトルを先輩に手渡すと、先輩は滅菌操作で綿球を万能つぼに入れたあと、ボトルのキャップを回し開封、おもむろに膿盆に最初の一滴をたらりと垂らしたあと、万能つぼにイソジンを投入。「なんでそんなふうにやるんですか?」と先輩に問いかけると、「さあね。たぶんこうしたほうがきれい(清潔)なんじゃない? 口切りってことよ」とクールに答えるのでした。 「牛は立ったまま寝るので、寝ている牛をちょっと押すと転倒するというアメリカの都市伝説があります。しかし実は牛は寝るときには横になりますし、立っている牛を人間が押し倒すには少なくとも2人必要です。この神話を裏づける証拠(エビデンス)はありません。『聖なる牛』とは慣習や伝統に基づいた実践を表す言葉です」という話を初めて聞いたのは、2016年の秋、アイオワ大学病院のEBPチームが主催するEBP実装のための研修に参加した時でした。アメリカの人にとって「聖なる牛」はなじみのある用語のようでしたが、私には「今、牛って言ったよね? 牛!? ヒンドウー教の話??」みたいな、間違えてヒアリングしたのかと思うような突飛な話に聞こえました。  でもその研修で、「医療現場では伝統的な慣習が定着しやすく、この慣習を変化させようとすると抵抗が生まれる、というようなことは多くあります。この慣習に基づいたケアを聖なる牛と呼ぶのです」と説明があり、思い当たる節が多々あり、とても腑に

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